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母の夢

外出から帰って少し寝た時の夢。

母と姉と、どこかのさびれた観光地にいる。母はもう末期で、フラフラしたりトイレでぐったりしたりするのを抱えるようにして移動した。ロープウェイに乗れば目的地に着けるので、どうにか母を乗り込ませるが、母はどこかで水をかぶったらしく、ピンク色のウィンドブレーカーとその下の白いTシャツがびしょ濡れだった。

姉と、どこかで着替えないと寒いし気持ちが悪いだろうから、と言いながら着替えを探した。その間にもロープウェイは進み、いつの間にかトロッコ列車になっている。母は後ろの方に乗っているようだった。ジェットコースターのように急斜面を上ると、その先は突然真っ暗な夜になっており、空には満天の星。そこから急降下して目的の海岸に着く。母は大丈夫か、と見に行くと、ぐったりしているので介抱する。薄い青色の液体をたくさん吐くと、少しスッキリしたらしく、気づいたら母は小さな猫になっていた。

今にも死にそうな猫をなでながら、お母さんお母さんと呼びかけ続けると、猫は膝に頭をゴリゴリ擦りつけて、上機嫌になった。猫になった母を抱っこして海辺に行き、星空がよく見える場所で立ち止まると、私の肩越しに空を見た母は「ウニャ。ウニャ」とびっくりしたような小さな声を上げた。

星が見えたんだな、と、旅行の目的を果たせたことにホッとしながら、抱いた猫にお母さん、お母さんと呼びかけ続けていた。

 

母と二人でオーストラリアに旅行したことがある。そこで砂漠の夜ツアーに参加した時、漆黒の空にうるさいくらい瞬く大粒の星々を見た。空と地平線の境目がわかるほどたくさんの星。夢の中でも、それくらいビカビカと輝く星、真上にビュッと現れては消える流れ星を見た。銀河鉄道に乗ったような不思議な夢。

亡くなって半年、日常的に母を思い出すわけではない。出かけた時や、おもしろい物を見つけた時に、母にお土産を買ったり話を聞かせたりしたいと思い、母の不在を強く感じる。それでもお墓参りや実家に行くわけでもなく、私は根っから薄情なんだとあらためて思う。

もっと、母が喜ぶようなことをすればよかったな。そんな気持ちが夢になったのかも。母は今ごろ銀河鉄道に乗っているのかな。実家でたいそうかわいがった4匹の猫たちをはべらせて、ゴロゴロしているかもしれない。

美しくて、不思議な夢だった。